世界観とブランディング

なぜ、あの場所には人が集まり続けるのか?

人が「つい足を運びたくなる場所」には、共通する仕掛けがあります。それは単なる設備の充実や流行性ではなく、“その場で何を感じられるか”という体験の設計にあります。

【1】買い物系施設の共通点:「買い物+〇〇」がある

たとえば買い物を目的とする施設でも、ただモノを売る場所ではなく、「暮らしそのものを提案している」ような空間に、人は自然と引き寄せられます。蔦屋書店や無印良品はその代表で、商品の一つひとつが“生き方の選択肢”として存在しているように感じられるのです。
また、IKEAやグランベリーパークのように、買い物だけでなく食事、遊び、休憩、家族との滞在時間までもが設計されている施設では、**「過ごすことそのものが価値」**になります。つまり、時間を消費するのではなく、“意味ある時間”を提供しているということです。
さらに、ローカルマルシェや進化型の道の駅では、地域性や手仕事、作り手との出会いが買い物体験に重なります。そこでは単なる「便利さ」だけでなく、**地域とつながるような“出会い”**が買い物の中に組み込まれているのです。

共通要素具体例解説
暮らしの提案がある蔦屋書店・
無印良品
商品でなく「ライフスタイル」を感じさせる
滞在価値が高いIKEA原宿・
グランベリーパーク
食事・遊び・居心地=過ごす理由がある
情緒と機能のバランスローカルマルシェ・
道の駅進化型
買い物だけでなく「地域との出会い」も得られる

参考までに買い物系以外に、エンタメ系とアート系を示唆します。

【2】エンタメ系施設の共通点:「感情を動かす演出」がある

一方、エンターテインメント施設に目を向けると、チームラボやジブリパークのように、光や音、映像といった**五感すべてを巻き込む“没入型体験”**を演出している施設が目立ちます。ただ遊ぶ、見る、のではなく、“感じる”ことを目的とした空間は、訪れる人の記憶に深く刻まれます。
また、USJに代表されるように、日常では決して体験できないスケールや演出が人々を惹きつける理由となっています。これらの施設は「ここでしか味わえない時間」を設計しており、それが繰り返し訪れたくなる動機になっているのです。

さらに注目すべきは、リトルプラネットやアソビルのように、**“誰かに見せたくなる体験”**が設計されている施設です。SNSで共有されやすい空間やストーリーは、ただの集客だけでなく、「語られる店」=“自走するブランド”をつくります。

こうした成功事例には、「商品」や「スペース」だけではない、**“過ごし方のデザイン”と“感情を動かす設計”**が共通しています。

共通要素具体例解説
五感が刺激されるチームラボ・
ジブリパーク
音・光・映像で没入体験を演出
非日常感USJ「ここでしか味わえない」と感じる空間設計
SNSシェア性が高いリトルプラネット・
アソビル
誰かに見せたくなる“物語”がある

 

【3】アート・学問系施設の共通点:「知と感性が共存」している

近年、人が集まるアート施設や学問系の空間には、知的刺激と感覚的体験の両立という共通項が見られます。単に美術作品や情報を「見る」「読む」だけでなく、自らの身体で“感じる”“考える”空間へと進化しているのです。
たとえば、京都市京セラ美術館や金沢21世紀美術館のように、建築そのものが物語を語っている施設は、訪問そのものが目的になります。設計の思想や空間の美しさが、アートそのものと融合し、体験価値を一段と高めています。
また、東京大学の公開講座や2025年の大阪・関西万博のように、“学び”をイベントとして楽しめる形に変換している取り組みも注目されます。知識が敷居の高いものではなく、「面白い」「誰かと話したくなる」ものとして共有される空間には、人が集まりやすくなるのです。

さらに、森美術館やジブリパークに代表されるように、ただ展示を見るのではなく、**“物語の中に自分を置ける没入体験”**を提供する施設も増えています。来場者が作品の世界に入り込み、登場人物のような気持ちで空間を歩く。そうした設計は、記憶に残り、再訪を促す大きな要素になります。
これらの施設が支持されている背景には、知性と感性の両方が動かされる設計思想があります。
「見るだけ」ではなく、「意味を感じ、誰かに伝えたくなる」場所――それが、これからの時代に必要とされる施設のあり方なのです。

共通要素具体例解説
建築が物語を語る京都市京セラ美術館・
金沢21美術館
「建物が目的」になるほどの魅力設計
学びが遊びになる東大公開講座・
大阪万博2025
難しい知が“イベント化”され、共有できる
物語の中に身を置ける森美術館・
ジブリパーク
展示でなく“世界に入る体験”がある