住宅受注の戦略論「ビレッジ戦略」

生き残るには変化するしかない。柔軟性ある工務店しか残らない。

2024年を迎え、工務店業界は前例のない変革期に突入しました。コロナウイルスによって引き起こされた変化は、時間を短縮したかのように、社会に深刻な影響を与えています。その中で、2011年から推進してきたビレッジ戦略の成果が見えてきました。ビレッジ戦略が成功しているのは、人間の本能や行動パターン、意思決定過程、そして自然回帰の願望など、多岐にわたる道理が関与しているからです。これらの要素はビレッジ戦略の核心にある思想と深く結びついています。

住宅市場における認知の増大が反響を引き起こすことは周知の事実ですが、肝心なのはその認知をどのように促進するかです。このプロセスでは、「脳科学」「価値観の変化」「バイアス」といったキーワードが中心的な役割を担います。脳科学は人々が情報をどのように処理し、意思決定をするかを明らかにします。価値観の変化は、消費者が何を重視するかを理解する鍵となります。バイアスは、人々が無意識のうちに持つ先入観や偏見を示し、これを適切に理解し対処することで、より効果的なコミュニケーションが可能になります。これらの要素を組み合わせることにより、ビレッジ戦略は工務店は住宅市場において、持続可能な認知拡大と受注の安定化を実現できます。

消費者の行動様式や価値観が急速に変化する今、工務店は受注を安定的に獲得するため、集客方法やブランディングの更新が必要です。予期せぬ事態にも揺るがない受注体制を構築するには、地域社会における「潜在的見込み客」を多く持つことが不可欠です。住宅のニーズがまだ潜在的な段階にある時から顧客との接点を築き、SNSを含む多様な情報発信手段を用いて彼らをファンに育て、その関係性を維持しながら受注に結びつけることが求められます。受注に至るには、「認知」と「ファン」が背後にあるという構造が必須です。多くの人々に知ってもらい、多くのファンを創出すること、これをビレッジ戦略を通じて実現していきます。

グリーン雑貨店とカフェで集客

ビレッジ戦略は、工務店向けの集客とブランディングの概念です。雑貨店やカフェを構えることで、地域の方々との接点を設け、ワークショップやファーマーズマーケットなどの開催や、SNSを通じての様々な情報発信を通じて良質なコミュニティーを築き、御社のファンを育て、顧客化=受注に繋げていく取り組みです。今、工務店がマーケットから求められているデザインやセンス、暮らしの価値観といった「ソフトの提案」を発信する装置でもあります。 競合他社とは違うポジションを地域で確立することで、今後ますます難化されるであろうと予測される集客や、人材採用の改善を狙います。

グリーン雑貨店+外構・ガーデン受注で売上をつくる

工務店経営者が雑貨店やカフェ開業を検討するにあたり、懸念点の一つは「本業の受注に繋がるのかどうか」ではないでしょうか。カフェでコーヒーを飲んでいる方が本当にすぐに家を建ててくれるのか、という疑問です。ここで鍵となるのが、受注がとりやすい「外構・ガーデンの商品化」です。ビレッジ戦略で推奨している雑貨店は植物を取り扱うグリーン雑貨店です。グリーン雑貨店で集めたお客様と、外構・ガーデンは非常に親和性が高く、実績を見ても比較的容易に受注できております。新築住宅については、地域での認知度が上がってくると、新築検討中の見込み客が、打ち合わせの段階で自分が好きな雑貨店が実はその工務店が経営していたことに気づいて、それが受注の後押しになった、といったことも起こっております。

SNSで御社は何を発信するのか

集客に欠かせないものとなったSNS。御社の存在を拡散するためには、「インスタ映え」といった言葉に象徴されるように『視覚的に魅力があり、共感を生み、「いいね」やシェアを通じてユーザーからユーザーへと波及していく魅力のあるコンテンツ』が必要になります。雑貨店やカフェの画像は、SNSとの相性が良いコンテンツです。特に雑貨店は日々新たな商品の入荷があり、商品自体に季節感があるので年間通じて安定的な情報発信の大きな手助けになります。

コモディティ化(一般化)を抜け出す

工務店が研鑽を重ねる中、住宅の質は、機能面でもデザイン面でも向上しています。また、ホームページや印刷物は、低予算で良いものを制作できるようになりました。物づくりと販促が成熟した結果、「消費者から見るとどこの工務店の家も同じように見える」というコモディティ化(一般化)が始まっています。競合他社と横並びで比較されると、営業の効率は低下し、価格勝負に陥り、営業マンが疲弊します。「御社に建ててほしい」とお客様に指名してもらえるよう、見込客と一対一で向かい合える関係を構築していける仕組みと商品づくりが急務です。

自社、ショールーム、モデルハウスを有効活用する

営業所やショールームのリニューアルや移転に際して、ビレッジ戦略を検討する工務店が多いです。単に新しい営業拠点をつくるのではなく、ライフスタイル発信のためのショップを併設したり、顧客接点をつくるためのワークショップを強化したりする取り組みです。また、せっかく作ったショールームやモデルハウスも平日は集客できない、といったことも起こりがちです。雑貨店やカフェを自社内で運営することで、こういった課題を解決します。

ビレッジでの集客を受注に繋げるためには

ビレッジ戦略に取り組むにあたり、重要なポイントが、「集客から受注までの社内体制構築」です。

  • ビレッジの責任者を誰にするのか
  • ビレッジをどの部署の管轄にするのか
  • どうやって見込客のニーズを喚起するのか
  • 店頭で獲得した見込客を社内でどう対応するのか
  • 見込客を顧客化するための「入り口商品」は何か

といったあたりを戦略的に決めなければなりません。また、雑貨店やカフェに割ける予算や人的リソースもきちんと見積もる必要があります。