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イナクトメント(環境に働きかける)

新しいことを行う意義とは

企業は「いきもの」である。調子が悪い時もあれば悪い時もある。ステージという見立てでは、幼少期もあれば青年期もある。ゆっくりと着実に変化する企業を「動的平衡」福岡伸一(生物学者)さんの言葉から私はよく考える。

軽井沢千住博美術館より引用

外部から見ると大きな変化はないが、上記の写真のように滝は遠くから見る(外部)と変化はない。しかし、近くで見ると(内部)では全く違うことになっている。我々の身体は3ヶ月で入れ替わるのと同じである。

イナクトメント

イナクトメント(カールワイク)という概念がある。経営で問題が起きるのは多義性が起きる時である。ひとによって、いろいろな解釈がある。Aさんの正義とBさんの正義のぶつかりあいである。この多義性を減らすことが重要になってくる。
何となく、ある方向性を指し示し、行動を起こす。環境に働きかけることによって新しい情報を感知する「何かを掴む」とも言える。
環境に関する解釈の足並みを揃えることができる。このように環境に行動を持って働きかけることから何かを感知、掴むことをイナクトメント(enactment)という。経営学で語りつがえる有名なハンガリー軍の逸話がある。ご紹介したい。

読書猿『問題解決大全』より引用

スイスの雪山でハンガリー軍偵察隊の遭難が起きた。雪が2日間に渡って降り続き、山頂ではかなりの悪天候であった。ホワイトアウト状態の中、小隊を救ったのは一枚の地図。その地図を頼りに3日後、無事に全員が帰還できたという小咄である。感の鋭い方ならば、ピレネー山脈の画像から推測されたと思うが、実はアルプス山脈で遭難した小隊はピレネー山脈(スペインとフランスの間)の地図を使って無事下山したということになる。


ここが肝である。多様化する経営環境において、スタッフに判断を求めていくケースが増えてきている。しかしながら、先が見えない中で決断するのは経営者の責務であろう。仮に間違った方向を指し示し、結果として全員無事で下山できたならば、経営方針発表とは違う結果になっても良いと思う。三、四方よしの状態であればなおさらである。必死に活動し、経営陣・スタッフは何を掴みながらその困難を乗り越え、後から振り返ることによって腹落ち、納得(センスメイキング)していく。会社が動的に進むことによって解釈がまとまり、「会社はこのような方向性で進みたいのか」、「社長の考えがよく分かった」になっていく。

企業の新しい取り組みを乗り越えていくと、内部の多義性を減らすことになる。究極、瞬間的に間違っててもいい。皆が納得している状況下での企業展開は強い。「何か掴む→腹落ち→行動」 こんなプロセスで人、企業は成長していく。

動的平衡である。社外からは見えない。しかしながら、内部は変わっていく。